はじめて老人ホームのカラーコーディネートを担当させてもらいました。念願だった福祉関係の仕事でしたが、無難な色使いをしないとだめなのかと心配していました。設計をされた建築家の中井勝之さんから、思い切った色を使って、お年寄りが元気になるようにしてくださいといわれ、本当にほっとしました。
プライベートな個室は落ち着きのあるベージュ系でまとめましたが、廊下、床、食 堂、風呂、トイレ、訓練室といった共用スペースには明るいピンクを、個室の扉はショッキングピンクで統一するという思い切ったカラー提案をしてみました。しかも、外壁にはあずき色のパープルを使ったので、とても老人ホームとは思えない建物になりました。
入居が始まって3ヵ月もすると、お年寄りが元気になり、うつ病の人が笑うようになった、さらに1年後になると、車椅子に頼っていた人がヘルパーの助けがあれば歩けるようになったなど、明らかに好転した人が増えたのです。もちろん、職員の人たちの献身的な介護やサポートが実を結んだ結果でしょうが、カラーの面でも少しは貢献できたのではないかと自負しています。ちなみに、ピンクには脳を活性化させ、女性ホルモンの分泌をうながす働きのあることが分かっています。
エピソードとして、内覧会の日に淳風会の理事の皆さんが見学に来られ、壁も床もピンクなので驚かれたそうです。こんなにピンクにして、お年寄りが興奮して転んだらどうするという理事もおられたそうですが、日々お年寄りが元気になり、家族の面会も多くて好評だったので、やっと納得していただきました。
その後、こうした福祉関係の建物のカラーコーディネートを担当することが多くなりましたが、そこに住むひとのための色彩をこころがけています。 |
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